2013年9月16日月曜日

Love Trainプロジェクトの展示が始まりました。プロジェクトについて。


お久しぶりです。お元気でしょうか。ずっとブログを書いていなかったもので、もうちょっとこまめに書き綴ろうと思いました。
私自身はこの夏にネパール、インドに現地の学生やベンチャー企業とプロジェクトをしに4週間、そしてそのついでに3週間ネパール、インド、バングラディッシュに行っていました。
そして先週帰ってきたのですが、休みもつかの間、ロンドンデザインウィークの一環として、私の在籍しているRoyal College of Art, MA Design Products, Platform 17のコースワークから、台湾にある国立成功大学の工業デザイン科の学生たちとコラボレーションワークショップを行ったMind the Gapプロジェクトの展示に参加しています。
ちょうどロンドンデザインウィークの時期なので、その時期に合わせての展示になっています。
ちなみにこのMind the Gapのプロジェクトの課題のテーマは駅。台湾の台南駅、ロンドンにあるマリルボーン駅を中心に駅について何かを作る、という課題でした。
私は「Love Train」という日本の鉄道マニア事情からインスピレーションを受けて、鉄道見学ツアーを色々な国でやったらどういう反応が出るか、というリサーチ&ドキュメンタリー映像のプロジェクトをすることにしました。

日本に3月に帰国していた時から撮影し始めて、現地の学生達に手伝ってもらって台湾、そしてロンドンに帰ってきてまた撮影。また期間をおいて夏休みに、ちょうど他のプロジェクトの為にネパール行く移動を利用して、ストップオーバー地であったデリーで途中下車してそこでも現地の学生に協力してもらって撮影をしていました。

とにかくこのプロジェクトに関しては、今まで以上にリサーチやビデオが中心なのと、メッセージ性というよりも、それがそうだったという事実を伝える事が中心なので、展示までかなりそわそわしていたのですが、とりあえず反応は割と良い感じです。

このプロジェクトを見せてると、電車好きなのかと聞かれるのですが、嫌いと言ったら嘘になるけれども、実際はマニアではないです。電車に乗るのは好きだけど、電車の名前もよく知らないし、時刻表の事なんかもよくわからない。
私は電車という一般的には地味な乗り物に愛着を感じる人達が居る、という事に興味があったので、このプロジェクトを始めました。スポーツカーのマニアだったら割と格好がつくし、男の人は好きな人が多いけど、電車となるとどこか地味な印象があるのに、沢山の人が興味を持っている。そして物に愛着を持ち始めるという、日本のアニミズム信仰的な要素もあると思って、鉄道文化性にを調べてみたかったのです。
私自身は基本的に普通ではあまり焦点に当てない、見過ごしたいようなローカルなサブカルチャーを、いかにデザインの題材として消化できるかという事に興味があるので、鉄道文化というのは格好の題材でした。

日本は特に最近鉄道文化が非常にポピュラーになってきている様子だったので、では異常なまでのその鉄道を観る、という行為を他の国の人にもやってみたらどうなるのだろうと思って、鉄道見学ツアーを色んな国で、20代の若者を対象に4−5人のグループを各国で作って、同じようなロケーションを対象にして行い撮影しました。実際に撮影を行った国は日本、台湾、イギリスそしてインドです。

日本にはじまり、世界の鉄道文化について調べたり、実際に行ってみたりしたのですが、色々実際撮影をしたり、実際に鉄道好きな人に会ってみることで色々と細部が見えてきて面白かったです。
特に鉄道の写真をとるという事に関しては、日本以外では国によって駅で撮影する事自体に規制がある国もあり、日本のように皆で鉄道撮影大会ができる事自体稀なようで、鉄道というものが、ただ交通機関の役割としてあるだけでなく、政治的な役割や、安全面の情勢から監視されているのだと色々考えさせられました。
そして、日本はスーパートレインが日本国内中を駆け巡っているような国なので、鉄道に愛着を湧く人が出てくるのが多くなるのも当たり前だとも思いました。逆にいえば、どこの国でも最速の格好のいい電車が走っている訳ではないのだな、とも。となると、日本の豊かさの顕示になってしまって、あまり格差的なところを見せてしまうと難しくなるとの判断から、格差が見えるような電車の捉え方に焦点は当てないようにしました。日本側から観たドキュメンタリーとして面白おかしく撮るというよりも、参加してくれる他の諸国の人からみた側の視点ももちろん考慮したかったので、色々なセンシティブな話題も考えながら、誰が観てもおもしろく感じられるように編集する事を心がけました。

最終的に、実際に取材で、台湾とイギリスの鉄道マニアの人達に会ってきたのですが、日本の鉄道マニアと比べて非常に穏やかというか、非常に純粋な人達で、非常に素朴で平和な趣味、という感じでした。こんなプロジェクトをやっていてこの発言はどうかとも思うかもしれませんが、色々最近鉄道マニアの人のモラルのない事が話題になっていたけれども、やはり日本の鉄道マニアは個人主義的というか、行き過ぎてエクストリームな状況になっている事は否めないと思いました。(もちろん海外の鉄道マニアも異端的な人達ではあるし、世界中どこにでもあるものだとはと思ったけれども人口が少ないからか、割と穏やかな印象でした。)

展示自体は、私の先生にリサーチだけでなくて、そこから発展する何かプロダクトを作れと言われていたのですが、始めた題材が鉄道マニアだったし、かといって鉄道マニア文化を助長したいかと言われたら別にそういうメッセージでもなかったので、今回の展示に関してはあくまでもとりあえずこういう名目で、リサーチをしたという事に関する発表で押し切りました。
ただ、せっかくの展示の場所だし、ビデオだけの展示だと弱いんじゃないかと指摘されていた中で考えた末に、みうらじゅんのいやげ物の展示や、Martin Parr のつまらないポストカードという本の事をふと思い出して、ツアーの途中で買ったり、もらったりしたお土産を展示しようと思いつき、先生にも話したら割といい反応だったので、世界の鉄道のおみやげコーナー展示棚を作って、そこに私物のおみやげを展示しています。最初からコレクションをするためにおみやげを買っていたわけではないのですが、色々旅先で友人にもらったり、帰ってきた後に電車のカードや、おもしろいおみやげを見つけて買ってきたりしていたので、自然と集まってしましました。
これがある事で展示自体に細部ができ、実際に来てこの場所に観にくる価値ができたなぁと思えたのでよかったです。実際に展示に観にくる人からしたら、やっぱりその場に来て、観て、どんな事でも良いから興味を持ってもらえる、というのが一番の理想だと思うので。
デザインというのは客観的な視点から公平に作られるものだけど、私の今回の展示は特に、主観的にパーソナルな方向で展示をするものになっています。
11組展示者が居るのですが、その展示を見渡してみたら、私ともう一人の男の子がやった駅でお茶を皆に無償で配ってみる、というプロジェクト以外は駅に設置する、デジタル系のゲーム等、ガジェット系のプロジェクトが多く、個性を出すいうよりは直線的でスマートな感じのプロジェクトが多かったので(皆なかなか力作なのですが)、今回は無理に作らずにあるものを自分の観た焦点からそのまま出してみる、という方向で展示して良かったかもしれないなと思いました。

日本の駅にあるスタンプが好きなので、あれを体験できるようにLove Trainスタンプを二つ(大きさが違うのを作ってみた)つくって、展示のポストカードに押す場所を作ったのですが、あれが結構好評で、皆面白がって押してます。

ドキュメンタリーのプロジェクトで、自分一人でツアーをオーガナイズしたり、ロケの下見に行ったりを、色々な国で行ったので、文化の違い等もあったりして色々大変だったのですが、実際に色々な国の文化や人とつながるきっかけになったりして、今となっては非常に良い思い出です。
忙しい中、かなりニッチな題材のこのプロジェクトに協力してくれた日本、台湾、イギリス、そしてインドの友人達、そしてこのコラボレーションプロジェクトを与えてくれたRCAの先生、台湾のNCKUの先生、休み期間中、私がネパールに行っている間にも展示のオーガナイズにかなり動いてくれていた、RCAの友人に感謝しています。

展示の場所はRCAのBattersea Campus (1 Hester Road, London SW11 4AN), Dyson buildingの二階のFoyer 1(このかなりサブカルな話題のプロジェクトなのに、たいそうな場所で展示ができているので恐縮なのですが;)で、今日から23 日まで展示中です。
(10:00-17:30, 23日は13時までとのことです。)
ダイソンビルは光が四方から差し込むモダンなさい最新おしゃれビルで、非常に設備が良いです。一階では他のリサーチプロジェクトも発表されています。
 
ちなみにPrivate viewは明後日17日火曜日の夕方から(6時頃かと思われます。)なので、ロンドンにおられる方は是非お立ちよりください。

ちなみにこれがプロジェクトの最後のまとめとして編集したビデオ、そしてその他の写真達も載せておきます。


Love Train project - complete / Tomomi Sayuda from tomomisayuda on Vimeo.